作品情報
火が燃えにくい世界で、孔雀と大蛇と人の記憶が幻想の地図を描く。
文藝春秋刊。単行本 ISBN は 9784163908366、文庫版 ISBN は 9784167915957。受賞時の対象は単行本であるため単行本の識別子を採用した。山尾悠子の幻想性が凝縮された二部構成の作品で、火の異変をめぐる世界の変容が、神話的なイメージと近代的な都市感覚を交差させながら語られる。
レビュー要約
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文庫化に際しても、幻想小説としての密度と言葉のきらめきが強調されている。筋を追うだけではなく、世界そのものに迷い込む読書体験として評価される作品である。
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読者の反応には、難解さへの戸惑いと、言葉が作る浮遊感や世界像への強い魅了が並ぶ。読み終えてから構造が見え始める作品として受け止められている。
書籍情報
- 出版社
- 文藝春秋
- 発売日
- 2018-05-10
- ページ数
- 248ページ
- 言語
- 日本語
- サイズ
- 13.8 x 2.6 x 19.5 cm
- ISBN-13
- 9784163908366
- ISBN-10
- 4163908366
- 価格
- 674 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/SF・ホラー・ファンタジー
三冠達成! 第69回芸術選奨文部科学大臣賞受賞 第39回日本SF大賞受賞 第46回泉鏡花文学賞受賞 ジャンルの概念を超えた驚くべき物語。 伝説の幻想作家、8年ぶりとなる連作長編小説。 シブレ山の石切り場で事故があって、火は燃え難くなった。 シブレ山の近くにあるシビレ山は、水銀を産し、大蛇が出て、雷が落ちやすいという。真夏なのに回遊式庭園で大茶会が催され、「火を運ぶ女」に選ばれた娘たちに孔雀は襲いかかる。 ――「I 飛ぶ孔雀」 秋になれば、勤め人のKが地下の公営浴場で路面電車の女運転士に出会う。若き劇団員のQは婚礼を挙げ、山頂の頭骨ラボへ赴任する。地下世界をうごめく大蛇、両側を自在に行き来する犬、男たちは無事に帰還できるのか? ――「II 不燃性について」 「彗星のごとく戻ってきた山尾悠子が新たな神話圏を築いた」(清水良典氏)
レビュー
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独特の世界を描く希有の作家
昭和51年7月、「SFマガジン」掲載の「夢の棲む街」で衝撃を受けて以来の ファンを自認していましたが、うかつにも本書が刊行されたことに1年ほど も気がつきませんでした。まあ、山尾悠子という作家は寡作の人ですからね (と言い訳をしてみる)。 初めて山尾悠子作品を読まれる方に紹介するとすれば... ジャンルとしては一応ファンタジー小説だと思いますが、ライトノベルとか 深夜アニメとかでよくあるような「剣と魔法の冒険物語」みたいなものでは ありません。そういった内容を期待された方は、たぶんガッカリするでしょう ね。 作品の多くで、普通の小説で言うところの「主人公」が登場しない、という ところが、特徴のひとつだと思います。もちろん登場人物はいますし、いちばん 良く出てくる人物を主人公とみなせないこともないですが、この作家の場合、 その人について描くことが主題ではないように思えます。 では何が主題かと言えば、「描写される世界そのもの」です。登場人物も、 その世界の案内人、あるいは舞台装置の一部として描かれます(重要ではない、 とまでは言いませんが)。 もうひとつ特徴を挙げるとすれば、その世界のカタストロフを描く作品が多い ところでしょうか。幼い子供に大量の積み木を与えると、たいていの子供が、 まず自分のまわりに壁を作り、最後にそれを壊す、ということをやるそうです。 そういった、人間の根源的なところにあるようなカタルシスの表現が、山尾悠子 作品の魅力だと思います。 本書についてですが、「飛ぶ孔雀」という雑誌掲載の作品と、「不燃性につい て」という書き下ろし作品からなります。一応、同じ世界を描写した続き物とし て読めますが、独立した作品としても読めます。 「飛ぶ孔雀」は、京都をモチーフとした世界を描いていて、茶道や和装の用語 がたくさん出てきます。そういった方面にはまったく詳しくないので、辞書や ネットで調べながら読みました。ネットで調べると、写真も出てくるのでわかり やすいですね(「灰形」とか)。用語を調べながら読むのはめんどくさいと思う 人もいるでしょうけど、私はそういった読み方も読書の楽しみ方だと思っていま す。前述のとおり世界の描写が主題なので、ディテールまで味わうということを しないと勿体ないですね。 「不燃性について」では、お待ちかね、カタストロフが描かれます。あまり 詳しく書くとネタバレになるので書きませんが、やっぱりこれがないとね。 早く次の作品が読みたいな..と思ったら「小鳥たち」が出てました。 また出遅れた~~。
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いわゆるファンタジー小説ではなく、ボルヘス的な幻覚小説
泉鏡花賞/日本SF大賞/芸術選奨をトリプル受賞した話題作の文庫化。表題作『飛ぶ孔雀』(文學界掲載)と『不燃性について』(書き下ろし)を併録。 はじめて山尾悠子さんの作品を読みました。ジャンル的には「幻想文学」というくくりだそうですが、それはロード・オブ・ザ・リングのような「ハイ・ファンタジー」という意味ではなく、 どちらかというと「ボルヘス」のような、非現実的な世界を描く文学、という意味のようです。 (個人的には、近い作家に、そのボルヘスや澁澤龍彦、小山田浩子、多和田葉子、ルルフォ、アストゥリアスなどが思い浮かびました) 表題作の『飛ぶ孔雀』は、石切場の事故のせいで、火が燃えにくくなった奇妙な世界が舞台で、説話的な短いエピソードがいくつかと、少し長め(50ページほど)の短編で構成された作品。 世界観的には、火が燃えにくくなったこと以外は、概ね現代日本のパラレルワールドだと思われますが、部分的に土俗的だったり、非現実的だったり、なんとなく古事記(神話)めいていたりと、どこかシュール(不条理)な世界が描かれています。 (念の為に書くと、火が燃えにくくなった理由は最後までわかりません) 個人的な印象としては、ボルヘスやカフカ、折口信夫さんや澁澤龍彦さんの小説を好きな方は楽しめると思いますが、文体が独特で、時系列も複雑、決して読みやすい文章ではなく、またストーリーも難解な部類に入ると思うので、 「ファンタジー小説」を期待すると混乱するのは確実なので、あくまで「文学」として臨戦態勢で望むのが良いと思います。 ちょっと、ベテラン読者向けという感じですね。自分も読みながら混乱しました。 それと、この小説と似たような感触の(読みやすい)小説をあげると、澁澤龍彦『高丘親王航海記』、多和田葉子『献灯使』があるので、そちらもオススメです。 (どちらも文庫で買えます)
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上手く受け止められてるんだろうか、オレは
わからないのに面白い系の小説。 飛ぶ孔雀→解説→飛ぶ孔雀→不燃性について→解説という順で読む。 初めて山尾さんの小説を読んだ時、「大変集中力を要する作品」という感想を書いていたが、それをすっかり忘れてボヨヨンと読み始め、あ、これはイカン、全然何も入ってこない、となって上述の順になった次第。 では、解説を読み、集中力を持って接すれば理解できる作品かと言うと、それは読み手それぞれによるのだろうが、イメージの湧き立ちとその連なりや共鳴は増すのではないかと思う。 火が燃え難い。 それまで/それからの因果関係ではなく、その状態から想像されたのであろう、人物の人となりや周りの情景。 理屈ではなくてイメージで受け止めるしかなく、上手く受け止められてるんだろうか、オレは、と思いながら、そして少々読むのがしんどいながらも、とても楽しかった。
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カバーが破れてた
内容はいいですが、表紙が破れてました。 Amazonは本の梱包を改善してください。 美しい本は造形にも価値があるんです。
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山尾悠子の到達点
「事故で火が点きにくくなった」。それだけでこれだけの世界を膨らませられるものかと驚きです。 幻想文学で、幻想世界を楽しむ小説ですので、ふつうの小説みたいにわかりやすい起承転結があるわけではありませんのご注意を。幻想文学ファンや、ちょっと変わった小説を読んでみたいという方におすすめです。
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なんじゃこりゃ……
日常生活者の私は、かなり苦労して読みました。 最初に感じたのは統合失調症の方と会話している状態に似て残る印象は困惑でした。 しかし、漢字の選び方や形容詞には学ぶことも多く有り、思念の積重ねの現れが文章化された表現なのでしょうか? 他人の理解など望まず、感性をテストされ結果は排除されたかのようでした。 私がなぜ困り果てたのかすらわかりませんでした。
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幻想の中の日常?それとも日常を纏った幻想?
著者初読にしてずっぷりとその世界に囚われた。 当初図書館で借りたものの「借りてる場合じゃないよ!」と慌てて購入。 現れてはいつの間にか退場し、またしれっと姿を現す人物や事象。「飛ぶ孔雀」の冒頭からいったいどこへ行ったのかと思っていたら「不燃性について」の終章近くでふらりとそこへ戻ったり。 概ね「飛ぶ孔雀」の方が現実に近く見えて剣呑に幻想の混じる感覚、そして「不燃性について」の方がディストピアともいえるところに平気の平左で馴染んでいる感覚である。しかしその二つは一つの世界なのである。 行きつ戻りつ、そして「おやこれはどこかで見た」と思い手繰り寄せれば懐かしく思い出したり、手掛かりを掴みながらも探せないかったりして、又必ず戻って行く所。
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ゆめかまぼろしか
読み返したら、もう少しわかるのかなぁ。 イメージはなんとなく捕まえられますが、時空を行ったり来たり。非常に脳髄をゆすられながら読んでいる感じになりました。たまには、よいのかもしれません。
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