日本の文学賞

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選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子

大宅壮一ノンフィクション賞

選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子

河合香織

出生前診断の誤診をめぐる裁判と家族の経験を軸に、命を選ぶことの倫理と医療の現場を追うノンフィクション。障害、妊娠、医療判断の重さを丁寧に問う。

出生前診断医療倫理障害家族

作品情報

選べなかった命を前に、医療と家族の選択を問い直す。

文藝春秋刊のノンフィクション。出生前診断をめぐる誤診と、その後に生まれた子、家族、医療の責任を追う。

レビュー要約

  • 当事者に近づく取材の粘りと、単純な賛否に回収しない倫理的な問いの立て方が評価されている。

書籍情報

出版社
文藝春秋
発売日
2018-07-17
ページ数
248ページ
言語
日本語
サイズ
13.9 x 2.7 x 19.5 cm
ISBN-13
9784163908670
ISBN-10
4163908676
価格
1690 JPY
カテゴリ
本/ノンフィクション/思想・社会/民事裁判

その女性は、出生前診断をうけて、「異常なし」と 医師から伝えられたが、生まれてきた子はダウン症だった。 函館で医者と医院を提訴した彼女に会わなければならない。 裁判の過程で見えてきたのは、そもそも 現在の母体保護法では、障害を理由にした中絶は 認められていないことだった。 ダウン症の子と共に生きる家族、 ダウン症でありながら大学に行った女性、 家族に委ねられた選別に苦しむ助産師。 多くの当事者の声に耳を傾けながら 選ぶことの是非を考える。 プロローグ 誰を殺すべきか? その女性は出生前診断を受けて、「異常なし」と医師から伝えられたが、生まれてきた子は ダウン症だったという。函館で医師を提訴した彼女に私は会わなければならない。 第一章望まれた子 「胎児の首の後ろにむくみがある」。ダウン症の疑いがあるということだ。四十一歳の光は悩 んだ末に羊水検査を受ける。結果は「異常なし」。望まれたその子を「天聖」と名づける。 第二章誤診発覚 「二十一トリソミー。いわゆるダウン症です」。小児科医の発した言葉に、光は衝撃をうける。 遠藤医師は、検査結果の二枚目を見落としていた。天聖は様々な合併症に苦しんでいた。 第三章 ママ、もうぼくがんばれないや ついに力尽きた天聖を光はわが家に連れて帰る。「ここがお兄ちゃん、お姉ちゃんと一緒に 寝る寝室だよ」。絵本を読み聞かせ、子守唄を歌い、家族は最初で最後の一夜を過ごす。 第四章 障害者団体を敵に回す覚悟はあるのですか? 天聖が亡くなると遠藤医師はとたんに冷たくなったように夫妻は感じた。弁護士を探すが、 ことごとく断られる。医師から天聖への謝罪はなく、慰謝料の提示は二〇〇万円だった。 第五章 提訴 それは日本で初めての「ロングフルライフ訴訟」となった。両親の慰謝料だけでなく、誤診 によって望まぬ生を受け苦痛に苦しんだ天聖に対する損害賠償を求めるものだった。 第六章 母体保護法の壁 母体保護法ではそもそも障害を理由にした中絶を認めていない。したがって提訴は失当。被 告側の論理に光は、母体保護法が成立するまでの、障害者をめぐる苦闘の歴史を知る。 第七章 ずるさの意味 光の裁判を知って、「ずるい」と言った女性がいた。彼女は、羊水検査を受けられなかった のでダウン症の子を生んでしまった、と提訴したが、その子は今も生きている。 第八章 二十年後の家族 京都で二十年以上前にあったダウン症児の出産をめぐる裁判。「羊水検査でわかっていたら 中絶していた」と訴えた家族を訪ねた。その時の子どもは二十三歳になっているという。 第九章 証人尋問 裁判では、「中絶権」そのものが争われた。「中絶権」を侵害され、子どもは望まぬ生を生き たというが、そもそも「中絶する権利」などない。

レビュー

  • 考えさせられますね

    学校の課題図書で購入させていただきました。発送も早く助かります。

  • 読めてよかった

    読後感としては重いし、命の選別、善悪、についての解は出ない。しかし、さまざまな立場の方の思いや言葉を、これまでの歴史や思想を、この本を通して読めてよかった。 自分の今や、家族の老いや、子供の成長、さまざまなことと向き合うたびに思い出すことになると思う。 書き切って、伝えてくれた著者に感謝したい。

  • 考えさせられる内容

    思ったより中身が綺麗でした

  • 選べなかった命

    長年にわたり取材を重ねている点は素晴らしい

  • 答えがないです。

    検査を受けるか否か。 出た検査結果にどう向き合うか。 人生そのものをかけた判断です。 正しい答えはありません。 壮絶な思いをかけた一つの答えです。 軽々しく、言えません。

  • いい買い物させてもらいました

    内容は期待より薄いものでしたが、それが確かめられただけでも良かったです。

  • 光さんの気持ちは理解できない

    ノンフィクションとしての完成度が高いと思った。NHKのニュースのように、あるテーマに対して異なる見方をする人に取材を行って読者の考えを問う、というオーソドックスながらも深く考えさせられる構成で、時間を忘れて読み耽った。作者の力量に感心する傑作だと思う。 しかし私は、ロングフルバース訴訟の原告である光さんの考えは最後まで理解できなかったし、気に入らなかった。 被告となる医師は「法律なんて関係ない。私はピュアに謝罪したいと思っているのです。お子さんを一緒に育てていきたい」と申し出たが、光さんの子どもが亡くなったら、手のひらを返したように冷たくなったとの記述があった。 私が医師だったとしても、できる支援は尽くしたと考え、冷たくはしないまでも光さんに割く時間は削ると思う。なぜなら、光さんは高い可能性で死産を望んでいたのだから。 光さんは医師の態度に業を煮やし、原告となって訴訟を起こす。最終的に一部認容となる。 そのときのコメントが「天聖に対する賠償金は認められませんでした。天聖に謝ってもらえなかったのが残念でした。裁判は天聖のために戦ってきたつもりでしたので、私たちへの賠償金がたとえ低くても、天聖の苦しみに対して謝罪してもらいたかった。」 医師がミスをしなければ、光さんは自分で天聖くんを殺す判断をしただろう。しかし、生かすという判断をしても、光さんの選択によって天聖くんは苦しみ抜いて死ぬことになった。 いずれの選択にも救いはないが、どちらの選択を光さんがしたとしても、天聖くんは苦しむ。 さらに十中八九死産を望んでいたはずなのに、産まれたら「まっさらな気持ちで、我が子として抱っこしたい。いたわってあげたい、撫でてあげたい。本当にいたんです。あの子は実在していたんです。抱っこできたのは一回だけ。それでも触れられた。どんなに重い障害を持っていても、生きているからあの子はあたたかかった。」と手のひら返し。 子どもが産まれたら愛しかったという気持ちは分かるけれども、もう意味不明。 後になってこう言えるのは、天聖くんが亡くなって、ダウン症を育てるという長く苦しい気持ちから解放されたからだと邪推せざるを得ない。 命の選択を責めるつもりはないが、命を区別して命の選択をしようとした人が、命の結果に対して謝罪を求めることが気に入らない。

  • 答えのない問題だが

    母の光さんが、天聖くんがひたすら苦しんで無くなっていった、そのような形は天聖くんも不本意だったはず、と何度か本書に出ていたが、少なくともお腹の中では温かい、心地よい時間を過ごせたのではないか。と思った。もし中絶に到っていれば、胎内でのその時間は無かった。そしてその時間を奪う権利って誰にあるのだろう。本書の一文にもあったように、受精卵となった頃から、いや、卵子と精子の頃から生は始まっている、と考えると、考えることに終わりが見えなくなってきた。

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