作品情報
貧しさの底から、土に根を張った言葉が立ち上がる。
吉野せいの代表的作品集。農村女性の体験を文学として結晶させ、大宅賞と田村俊子賞の受賞作として広く知られる。
レビュー要約
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ごつごつした言葉の迫力と、貧しさを生き抜く人間の強さが評価されている。明るさと痛みが同時に残る作品として読まれる。
書籍情報
- 出版社
- 文藝春秋
- 発売日
- 1984-04-01
- ページ数
- 230ページ
- 言語
- 日本語
- ISBN-13
- 9784167341015
- ISBN-10
- 4167341018
- 価格
- 168 JPY
- カテゴリ
- 本/文学・評論/エッセー・随筆/日本のエッセー・随筆/近現代の作品
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レビュー
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この本に出会えてよかった!
ここ十年に読んだ本で、これほど凄い本はなかった. 梨木香歩の「ここに物語が」で知ったのだが、出会えてよかった. 圧倒される勁い文章、死にゆく子への哀切、けなげな雌の地鶏へのまなざし... もっと世に知られて、読まれてほしい本.
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まだ最初の4篇だけの読了、最後まで読んだら恐らく5評価になると思える本です。
人、自然、作者の思いが痛い程伝わってきます。
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驚嘆する表現力
「その手足が疲れを超えて萎えて弱り、その頭脳が生きる苦しみを稲妻のように閃めかし、その眼は美しくもない世の汚辱の姿を涙でみつめ、その耳は払いのけたい偽りの怒りを鋭く聞く。 けれど胸は波立ちながらもほっかりとぬくもりを持つ春風のように柔らかく、痛んだ傷口の上をそっと撫でてやりたい気持ち。その岐点に立ち、そのあたりをさまようものの吐息が詩というものかと、詩を知らない私は考える。だけに詩は人間の心に湧いて言葉の中に哮ける精髄のあらしなのだとも思う。その人さまざまの中にさまざまの詩は生まれ、そのさまざまの詩のかげにその人は生かされていく。蛇に怖じぬめくらの私は、めくら相応の勘の悪さでしんけんに考えこむだけだ。そんな私は、気紛れみたいに猪狩満直と名乗る男を思い出す。」驚くような見事な文章で、否、驚きに充ち満ちた文字の連なりが織り成す模様。開高健が「一刀彫の木彫りを見る思い」と評したものだが、然り、彫心鏤骨ともちがい、さりとてそれは非をいうにあらず、彫心鏤骨は往々にして彫虫篆刻になりがちでそういう小賢しさのかけらもない、生のまま、に近いと言おうか。素朴とか古拙というにはあまりにも堂々たるひとつの妙味を見せていて。土にこれ程近くにあり、土にまみれながら見惚れるような造形美を見せるものなぞ、私は他に知らない。農民だの農民の仕事を描いた作品は数多あれど、ここまでの土に触れたもの、貧しさ哀しみという人の世の底辺に触れたもの、それでいて包みこむ土そのもののような豊穣な文体。元々文学に親しみ、携わる方々に親炙していたということもあろう。山村暮鳥だとか三野混沌だとか。三野混沌の言葉「自分たちはそれから抜けるわけはない。生まれ変わることもない。人々の現実はそのことを私に教えてくれ助力したりしているから、苦痛な中でも極めて平易に話は出来る。険しく見えていてそうではなく、手をさしのべていることの地道なよろこびが、なぜか目の前の山を見るように豊かでね」含蓄、余韻の深さよ。日常会話で自然とこのような文句が出てしまうのだ。なにより、貧しい農家で懸命に生きてきて蓄積され熟成された内面のもの、ということだろう。なにせ、七十を過ぎて執筆を始めた本著。見るものが見ればたちどころに分かる見事さで、大宅壮一賞、田村俊子賞を受賞された。その二年後に亡くなったのだという。
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TOC
春 かなしいやつ 洟をたらした神 梨花 ダムのかげ 赭い畑 公定価格 いもどろぼう 麦と松のツリーと 鉛の旅 水石山 夢 凍ばれる 信といえるなら 老いて 私は百姓女
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汗の染みた文字
創作のための参考にと購入。今まで自分なりに知らない世界のことまで想像を膨らまし小説らしきものを書いてきたが、それらが試験管の中の世界だけでしかなかったのを知らされました。自分が経験した狭い世界でも深く掘り下げればそこには普遍的な何かが眠っているはずであり、それをすくい上げる努力を怠るなを痛感させられました。
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読後いくつかの場面が心に浮かび不覚にも涙が落ちた
これはドスンと胸に響く本でした。昭和50年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した作品。福島県いわき市の農婦であった吉野せいが76歳の時。受賞の選評で選考委員の白井吉見は「芥川賞がふさわしい」と評し、開高健は「恐るべき老女の出現である」と語ったともいう。 この作品は開拓農民の妻として開墾に明け暮れ、貧しさの中に生きた歳月の記録。若い頃は文学を志すも開拓農民の夫(三野混沌)と結婚。農地改革運動や土着文学の理想に生き家庭を顧みない夫の代わりに家族を支えるために子供を育てながら畑に立ち続ける妻。ものを書く時間の無いまま必死で働く間に歳月は流れる。生活のために書けない自分と理想に生きる夫との間には強い怒りを帯びた相克があった。 詩人である古くからの知人(草野心平)の強い薦めで再びペンを持つのは、50年近く連れ添った夫の死後。その時、吉野せいは70歳を超えていた。書くことで自分自身の50年を見つめ直す。書くことによる夫との和解。孤独の意地から抜け出した。70代で作家デビューした農婦の才能は世間を驚かせ一躍時の人となるも、受賞からわずか2年後の昭和52年に78歳で没する。 その独特の文体は圧倒的。私の貧弱過ぎる語彙では語れません。序文を寄せた串田孫一の言葉を借りると「刃毀れ(はこぼれ)などどこにもない斧で、一度にすぱっと木を割ったような、狂いのない切れ味」と評している。16の短編からなるこの本。読後感に浸りながら本の後書きを読んでいると、「洟をたらした神」「梨花」など収録されていた短編のいくつかの場面が心に浮かび不覚にも涙が落ちた。この先も何度も読む本でしょう。そして、私も年齢を重ねるに従って味わいも変わってくると思う。 「人間ちゃ泣きながら歩いているうちに、ほんとの自分をみつけてくるものだよ」 素晴らしい。
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まだ読んでいない
まだ読んでいないが、まず間違いなく面白いと思っています。 日本の小説はあまり読まないが、表題に惹かれると買ってしまう。 田舎育ちのジジイにとっては、郷愁かなにか知らないけど・・・ゆっくり読ませてもらう。
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ぜひ読んで欲しい作家
久々に気合いが入った読書でした。吉野せいと言う作家を秋吉久美子さんの講演で知りました。文章力の強さ上手さ、心に響く素晴らしい作家です。もっと広く皆んなに ぜひ読んで欲しい一冊です。
関連する文学賞
- 田村俊子賞 第15回(1975年) ・受賞
- 大宅壮一ノンフィクション賞 第6回(1975年) ・受賞