電撃小説大賞 でんげきしょうせつたいしょう
第32回(2025年)
受賞者
9名「朱古典(しゅこてん)」と呼ばれる呪われた書物は、持つ者に異形の力を与え、心を支配し、運命を狂わせる。その継承者にして『曾根崎心中』の継承者でもある花香しのね、そして膂力に優れる高校生・道徳逢見がバディとなり、朱古典をめぐる数々の事件に挑む。不死の力を悪用する動画配信者、しのねを狙う同級生、血の海を渡る男装の麗人——多くの事件を追ううちに、逢見はしのねの真の目的が「古典とともに心中する」ことにあると知る。青春小説でありながら、最新の心中小説でもある一作。
これは少年少女の青春小説であり、その駆け抜けた先に待つ、最新の心中小説である。
二十年前の災厄により大地が浮遊島と化した終末世界を舞台に、失踪した母を探す魔女の少女アセビと、無人兵器の制御ユニットを名乗る謎めいた少女ピエリスの出会いと別れを描くガールズファンタジー。浮遊鉱石アイリスリットを操り空を駆ける魔女が、暴走した無人兵器群オルクによって分断された世界をかろうじて繋ぎ止めている。不時着した浮遊島で出会ったアセビとピエリスは奇妙な共同生活を送るうち、言葉では言い表せないほど深い絆を育む。これは二人の魔女の別れと出会いを繋ぐ、ひと夏の物語。
「さよなら、アセビ」「またね、ピエリス」
片田舎に暮らす高校生・間原葵は、中学生の頃から作曲活動を続けてきたが一切注目されず、インターネットで活躍する歌姫・ニーナへの嫉妬に鬱屈した日々を送っていた。ある日、落ちていた鍵を拾ったことをきっかけに、クラスの内気な少女・蜷川真衣と出会い急速に仲を深めていく。しかしやがて彼女の正体がニーナだと知り、惹かれていく気持ちと嫉妬心の間で葛藤する。少年少女の夢と恋と挑戦への葛藤を描く、甘酸っぱい青春ラブコメ。
不器用ながらも相手に一生懸命に向き合う二人のやりとりや、挑戦し続ける姿をずっと見ていたい。そんな甘酸っぱい感情と、滾るような初期衝動を感じさせる作品。
高校生の梓が図書館で出会った旭は、雨を操り動物と話すことができる不思議な力を持つ少年だった。いつも雨に孤独を隠す彼と静かに寄り添う図書館での時間は、梓の心を温めていく。しかし梓は「彼は殺人犯の息子だ」という噂を耳にする。周囲の冷たい視線と旭が抱える暗い過去。旭は梓を守るために自ら距離を置こうとするが、ふたご座流星群の夜に二人は一つの約束をし――旭は姿を消した。雨が呼ぶ奇跡と星空に誓う恋の物語。
ねえ旭、明日も図書館に来るよね?
厳寒の地にある北の大国の塔に幽閉されていた西の小国の王子・ジェラルドは、ヒトではない醜い姿をした化け物「ローアンナ」と出会う。盲目ゆえに外見に惑わされないジェラルドは、彼女の美しい心を知り、ともに成長する。やがて塔を飛び出したジェラルドは、世界の存亡をかけた壮大な冒険の旅に踏み出す。盲目の少年の成長と出会い、そして別れ。ローアンナとの「約束」をめぐる、王道の冒険ファンタジー。
盲目の少年の成長。出会い。そして、別れ。それから——「かいじゅうのむすめ」。彼女との「約束」をめぐる、壮大な冒険ファンタジー。
原因不明の大量降砂によって砂に埋もれた近未来の日本。砂漠と化したトウキョウをさまよう少女・セグメの目の前に謎の建物が突然現れる。そこは「あぽかりぷちゅ」、さまよう人々を載せて砂漠を行く不思議な戦艦に開店したメイド喫茶だった。艦長兼メイド長のハゴロモや個性的なメイドたちに囲まれ、半強制的に見習いメイドにされたセグメは、厳しい研修でメイドの極意を叩き込まれていく。笑いありドンパチありちょっぴり涙あり、殺伐とした世界を「かわいい」で救うガールズファンタジー。
かわいた世界を、「かわいい」で救う!?
大陸の西の小さな王国を苦しめる旱魃を解決するため、王は何千年も生きる悪竜エキドナへ貢物を捧げることにした。選ばれたのは、戦争で滅ぼした国の亡国の王女シルビア。魂を食われる運命を受け入れたシルビアは、自暴自棄になりながらも臆せず竜に啖呵を切り、奇妙なことに竜の興味を引いてしまう。竜は理性を保つために人の魂を食う必要があり、シルビアはいつか魂を食われる代わりに、エキドナとともに世界の美しいものを見て回る旅をすることになる。剣と魔法でなく金と知恵で紡がれる、滅びの運命を背負う王女と竜のハイファンタジー。
剣と魔法じゃない、金と知恵のハイファンタジー。こういうものを読みたかった!
放射性降下物で地上が汚染された世界、企業「ヤクシマ」が支配する巨大建造物「トップタワー」。生き延びるために身体を機械へと「切り売り」していた少年・ラッキーは、仲間や親を失いながらも、ヤクシマが極秘開発した神の力「Providence」を盗み出す。更なる奇襲で孤立した彼に残ったのは、地下世界「アンダー」に生きる天使と呼ばれる少女・ヒカリだった。もう誰一人失わないと誓ったラッキーが、腐りきった現実に引き金を引く——コアなSF設定と外連味溢れるセリフが光る、第32回電撃小説大賞・奨励賞受賞作。
もう、迷わない。もう、逃げない。もう、誰一人だって失わない。——「大当たりだ」
人間の「悔恨」を食糧とする異形・不知火と、悔恨を持たないために村の滅亡を生き延びた青年・ハル。ふたりは不知火の餌となる人間を探す奇妙な旅に出る。白い煙を吐く骨の村、湖を守る大蛇、人間の過去を覗く巨大な毛玉の異形など、様々な怪異や人間に巡り合いながら、残酷で静謐な旅を続ける。インモラルなふたりがやがて「ともに生きていきたい」と思うようになるまでを描いた、食道楽伝奇ホラーの連作短編。
ふたりの間に存在しない悔恨を埋め合わせるように喰らっていく旅だ。