芸術選奨文部科学大臣新人賞 げいじゅつせんしょうもんぶかがくだいじんしんじんしょう
第75回(2025年)
受賞者
25名江口のりこが舞台『ワタシタチはモノガタリ』と『リア王』で示した演技の成果。前者では小説家を志しWebライターを続ける40歳の女性を関西弁で等身大に演じ、後者ではリア王の長女ゴネリルを印象的に表現した。
関西弁の発話に宿る笑いと情感、そしてゴネリル役の鮮烈さが評価された。
藤田俊太郎の演出による『リア王の悲劇』とミュージカル『VIOLET』は、古典悲劇と現代ミュージカルという異なる形式を通して、傷を抱えた人が他者や社会と向き合う過程を描く二つの舞台作品である。『リア王の悲劇』は父と娘たちの断絶を現代的な視点で捉え直し、『VIOLET』は顔の傷を抱える女性の旅を通じて自己受容への歩みを映し出す。
古典悲劇とミュージカルを横断し、現代の観客へ明快に問いかける藤田俊太郎の演出成果。
河合優実は、映画「ナミビアの砂漠」「あんのこと」ほかでの演技を含む俳優としての成果に対して受賞した。特定の一作品を受賞作として扱うのではなく、受賞者の演技活動を顕彰する記録である。
月に一度、PMSによる強い苛立ちに苦しむ藤沢美紗と、パニック障害を抱える山添孝俊。玩具会社で同僚となった二人が、恋人や友人という言葉だけでは括れない関係を育みながら、日々を生き抜くための小さな支えを見つけていく物語である。
思うようにいかない毎日。それでも私たちは救いあえる。
北村朋幹は、リスト作曲「巡礼の年」全曲を収めたディスクを中心とする音楽活動の成果により受賞した。個別の書籍ではなく録音および演奏活動を顕彰する受賞のため、受賞作の書誌情報は掲載していない。
長谷川将山は、東京オペラシティで開催した尺八演奏会「B→C 264 長谷川将山(尺八)」における演奏と企画の成果により受賞した。受賞対象は出版物ではなく演奏会での芸術活動であるため、個別の書誌情報は掲載していない。
この受賞は特定の一公演に対するものではなく、スズキ拓朗が主宰するダンス・カンパニーCHAiroiPLINで発表した複数の舞台と、古典を独創的に再解釈する継続的な活動を評価したものである。
「第九回翔之會」における中村鷹之資の舞台成果を顕彰した受賞であり、単一の書籍作品に対する授賞ではありません。
立ち退きが進む海辺の団地を舞台に、老いと病を抱える祖父と孫娘、親を失踪で失った姉弟、近所の犬を世話する老女、少女たちや兄弟など、そこに暮らす人々の季節と記憶をたどる群像小説。変化のなかで取りこぼされる喜びや悲しみと、なお残るつながりを描く。
過ぎゆく歳月のなか、海辺の団地に息づく人々の記憶と希望を描く初長編。
西村麒麟の第三句集。俳句結社「麒麟」の創刊をはさむ時期の作品を収め、生き物や植物、日々の景色を細やかな観察と軽やかな想像力で捉える。第75回芸術選奨文部科学大臣新人賞(文学部門)の受賞作。
生き物の姿をいきいきと捉え、可憐な生まで感じさせる句集。
青山悟は、資本主義、労働価値、ジェンダー問題などを刺繍表現で問い直す作家活動と、2024年春の「青山悟 刺繍少年フォーエバー」展を含む成果により受賞した。特定の書籍を顕彰する受賞ではないため、受賞作の書誌情報は掲載していない。
笹井史恵氏の漆芸家としての活動と、漆芸展「風様ふわり、忽ちに雷様」をはじめとする成果を顕彰した受賞です。特定の書籍作品に対する受賞ではありません。
《Eye to Eye》ほかの映像・インスタレーション作品および継続的な制作活動の成果に対する顕彰です。書籍としての個別受賞作ではありません。
アーティストデュオNerholの初の大規模個展。連続イメージを積層して手で削る代表作をはじめ、自然環境と人間社会、静止と移動、可視性と不可視性といった境界を横断する17年間の表現活動をたどる。
積層したイメージを削り出し、時間と空間の多層性を問い直すNerholの活動を総覧する展覧会。
藤本タツキの同名漫画を原作とする劇場アニメ。学年新聞で四コマ漫画を描く藤野は、不登校の同級生・京本の才能に出会い、競い合いながら漫画に打ち込んでいく。二人を結ぶ創作への情熱と、人生を変える出来事を繊細な手描きの表現で描く。
漫画を描く二人の少女を結ぶ情熱と時間を、手描きの線で刻んだアニメーション映画。
橋野桂は、ゲーム「メタファー:リファンタジオ」のクリエイティブディレクターとして示した成果により受賞した。受賞対象はゲーム作品における創作活動であり、書籍としての個別受賞作ではない。
関西テレビのドキュメンタリー『さまよう信念 情報源は見殺しにされた』は、奈良県田原本町の少年放火事件をめぐる供述調書の流出と、取材源となった精神科医の逮捕・有罪判決を追う。17年後に当事者の証言をたどり、取材源の秘匿、表現の自由、刑事司法を問う作品である。
取材源を守れなかった報道の側から、情報公開と刑事司法の境界を見つめ直すドキュメンタリー。
NHKスペシャルを基に、特攻隊員約4000人の本籍地と経歴を15年にわたる取材と資料調査からたどるノンフィクション。体当たり攻撃を命じられた人と命じられなかった人の選別、そして社会に広がった「一億特攻」の熱狂を検証する。
極秘資料と長年の取材から、特攻隊員の選別と社会の熱狂をたどる。
坂本頼光は、寄席定席での活弁の芸とその活動成果を評価されて受賞した。受賞対象は単一の書籍作品ではなく、活動写真弁士としての芸と業績である。
映画『ナミビアの砂漠』『Cloud クラウド』ほかにおける渡邊琢磨の音楽の成果を顕彰した受賞であり、単一の書籍作品に対する授賞ではありません。
小川希は、Art Center Ongoing代表として企画した「芸術激流2024 ラフティング+アート」など、芸術振興における活動の成果により受賞した。受賞対象は御岳渓谷を舞台とする芸術事業の企画・運営であり、個別の書籍作品ではないため、受賞作の書誌情報は掲載していない。
松田崇弥は、松田文登とともに株式会社ヘラルボニーを起業し、知的障害のある作家のアートを社会に流通させる活動を進めた。「HERALBONY Art Prize 2024」の創設や海外展開などの業績が評価された受賞であり、個別の書籍作品を対象とするものではないため、受賞作の書誌情報は掲載していない。
松田文登は、松田崇弥とともに株式会社ヘラルボニーを起業し、知的障害のある作家のアートを社会に流通させる活動を進めた。「HERALBONY Art Prize 2024」の創設や海外展開などの業績が評価された受賞であり、個別の書籍作品を対象とするものではないため、受賞作の書誌情報は掲載していない。
1938年のオーストリア併合を、首相クルト・シュシュニクの抵抗と、芸術都市ウィーンに生きた文化人・芸術家たちの苦悩を通して描く歴史書。ナチス・ドイツの侵攻によって独立国家と豊かな文化が崩壊していく過程をたどり、政治と文化が直面した危機を考察する。
オーストリア併合で芸術都市ウィーンの文化が崩壊していく日々を描く。
近現代日本の書道史を、前衛書を軸とする「革新派」と、従来は十分に論じられてこなかった「伝統派」の二つの潮流から読み直す研究書。両者の制作理念と美学を対比しながら、近代に形づくられた「書の美」の評価の偏りを問い、新たな歴史像を示す。
革新と伝統の両面から、近現代日本における書の美の歩みを読み解く。