毎日出版文化賞 まいにちしゅっぱんぶんかしょう
第31回(1977年)
受賞者
13名『枯木灘』は、紀州の土地と血縁の記憶を背景に、青年・秋幸の生と暴力、家族の因縁を濃密な文体で描く長編小説です。現実の土地に根ざしながら、神話的な厚みを帯びた中上健次の代表作です。
紀州の土地と血の記憶が、青年の身体と運命を激しく揺さぶる。
『水中庭園』は、昭和三十年前後の東京と地方を背景に、上京した青年の性への目覚め、友人関係、就職難を描く青春小説です。高度経済成長直前の時代の空気を、個人の迷いとともに浮かび上がらせます。
上京した青年のまなざしに、時代の青春と焦燥が映る。
『高群逸枝と柳田國男』は、婚姻史を中心に、高群逸枝と柳田國男の思想的接点と相違を検討する評論です。女性史研究と民俗学の交差点から、日本社会の家族観を問い直します。
女性史と民俗学の交点から、婚姻と家族の見方を問い直す。
『大津事件の再評価』は、一八九一年の大津事件を国際政治と国際法の視点から読み直す研究書です。事件関係文献と現地調査を踏まえ、司法権独立の物語にとどまらない複雑な政治的意味を検討します。
大津事件を、国際政治と法の視点からもう一度見直す。
『市民参加』は、現代都市政策と参加民主主義をめぐる理論と実践を扱う政治学・都市政策の著作です。住民運動、自治体、コミュニケーションを通じて、政策決定に市民が関わる条件を考えます。
都市政策の現場で、市民が決定に関わる意味を問い直す。
『公と私』は、社会における公的領域と私的領域の関係を問い、組織、国家、個人のあいだに生じる緊張を考察する思想・社会論です。近代社会で揺れ動く公共性と個人性をめぐる問題を扱います。
公的なものと私的なものの境界から、近代社会の緊張を読む。
『民族探検の旅』第2集「東南アジア」は、日本人による東南アジア探検と民族文化へのまなざしをまとめた大型の民族誌的出版物です。写真と解説を通じて、地域の暮らし、信仰、移動の歴史を伝えます。
東南アジアの暮らしと文化を、探検の記録と民族誌の視点でたどる。
『アメリカ教育通信』は、アメリカの小さな町から学校教育と地域社会の姿を伝える教育評論です。大きな国の日常的な教育現場を観察し、日本の教育を考える手がかりを提示します。
小さな町の学校から、アメリカ教育の現場と日本への問いが見えてくる。
『川の健康診断』は、川の水質や生物の状態を手がかりに、河川環境を科学的に見つめる自然科学読み物です。清冽な流れを求める視点から、人と川の関係をわかりやすく描きます。
川の生きものと水の表情から、環境の健康を読み取る。
『宮崎滔天全集』は、アジア主義者・宮崎滔天の著作、書簡、革命運動に関わる文章を集成した全集です。中国革命との関わりを含め、近代日本とアジアの思想的交流をたどる基礎文献です。
宮崎滔天の言葉から、近代日本と中国革命の交差が見えてくる。
『宮崎滔天全集』は、宮崎滔天の政治活動、思想、書簡をまとめ、近代日本が中国革命とどのように関わったかを読むための全集です。小野川秀美らの編集により、資料性と読み物としての迫力を併せ持ちます。
革命を支えた言葉と行動が、全集のかたちで立ち上がる。
『現代史資料』は、戦前から戦中にかけての日本現代史を一次資料中心に読むための大部のシリーズです。内川芳美が関わる「マス・メディア統制」巻は、政府側資料を中心に言論統制の過程をたどります。
言論統制の資料を通じて、戦前・戦中の日本社会を読み解く。
『日本児童文学史年表』は、日本の児童文学に関わる出来事、作品、出版動向を年代順に追う基礎資料です。明治から昭和戦前期までの流れを把握するための、児童文学研究の重要な道標となっています。
児童文学の歩みを、年ごとの出来事と作品からたどる。