日本芸術院賞 にほん げいじゅついん しょう
第36回(1980年)
受賞者
11名『女弁護士』は、日本画家・浜田台児が1978年の日展に出品した人物画。肖像表現を得意とした作者が、近代的な職業女性の姿を鮮やかな色彩と端正な構成で描いた作品として、日本芸術院賞の対象となった。
近代的な職業女性を、浜田台児らしい明快な色彩と人物把握で描いた日本画。
『六月の頃』は、洋画家・西山真一が第11回日展に出品した風景画。自然を正面から見つめ、生命の動きや季節の気配を力強い筆致と明るい色彩で描く、西山晩年の画境につながる作品である。
初夏の自然に満ちる生命感を、重厚な筆致と明快な色彩でとらえた洋画。
『振向く』は、佐藤助雄が1979年に制作したブロンズ彫刻である。人の動作が反転する一瞬をとらえ、伸びやかな姿勢と静かな詩情を備えた人物像として、日本芸術院賞の対象となった。
振り返る一瞬の身ぶりに、佐藤助雄の穏やかで詩的な人物表現が凝縮されている。
『玄鳥』は新開寛山による陶芸作品で、鳥の意匠を陶器の器形に組み込んだ作品として日本芸術院賞の対象となった。1979年制作の《玄鳥花瓶》として複数の美術館収蔵情報に記録され、京焼の技法を基盤にしながら、鉄釉や彩色、彫りの表現を生かした重厚な造形が特徴とされる。
鳥の気配を器のかたちと釉調に宿した、新開寛山の陶芸作品。
『親和銀行本店』は、白井晟一が長崎県佐世保市に設計した銀行建築。白いトラバーチンの量塊と黒いアルミの塊を組み合わせ、異なる素材と形象を緊張のある調和へ導いた、白井円熟期の代表作である。
石と金属、量塊と緊張を組み合わせた、白井晟一円熟期の銀行建築。
「多年にわたる劇作家としての業績」は、田中千禾夫が新劇を中心に築いた戯曲・演出・評論の仕事全体を対象とする顕彰である。『マリアの首』『教育』『千鳥』などの戯曲や演劇評論を通じて、戦後日本演劇に人間の罪、救済、信仰、精神の渇きといった主題を深く刻み込んだ歩みが評価された。
戦後日本演劇の精神的な深みを形づくった、田中千禾夫の戯曲と評論の業績。
佐藤佐太郎の受賞対象は、短歌結社「歩道」の創刊と主宰、斎藤茂吉に連なる写生の方法を踏まえた独自の抒情、毎日新聞歌壇や宮中歌会始での選者としての活動を含む、歌人としての長年の仕事である。第一歌集『歩道』から晩年の歌集まで、平明な言葉に品格と光を宿す作風で近現代短歌の一角を築いた。
平明な言葉の奥に、写生と抒情を響かせた歌人としての歩み。
武満徹の作曲家としての創作活動を対象とする受賞業績。西洋現代音楽、邦楽器、映画音楽、偶然性や沈黙への感覚を横断し、日本の音の感性を国際的な現代音楽の語法へ開いた仕事として評価された。
沈黙と響きのあいだで、武満徹は日本の音を世界の現代音楽へ接続した。
上原真佐喜の受賞対象は、山田流箏曲の演奏家として積み重ねた業績である。二代目上原真佐喜として真磨琴会を率い、歌ものや浄瑠璃ものを中心に古典の深い味わいを伝えながら、作曲や普及にも力を尽くした。
山田流箏曲の古典を支え、演奏・作曲・継承の面で一門を導いた業績。
「能楽界に尽くした業績」は、下掛宝生流ワキ方の能楽師・宝生弥一の舞台活動と流儀への貢献を対象にした顕彰である。宝生新に師事してワキ方として重厚で品格ある芸を磨き、戦後の能楽界で主要な演能を支えた存在として評価された。
ワキ方の品格と重厚な芸で、戦後能楽を支えた宝生弥一の業績。
六代目市川染五郎の歌舞伎俳優としての舞台成果を対象とする受賞業績。古典歌舞伎の型を身につけたうえで、歌舞伎を基調とする新作にも取り組み、伝統の継承と現代的な舞台表現を結びつけた演技が評価された。
古典の型と新作への意欲が、歌舞伎俳優としての舞台成果を形づくった。