新潮社文学賞 しんちょうしゃぶんがくしょう
第11回(1964年)
受賞者
4名『個人的な体験』は、障害を持って生まれた子を前にした青年バードの恐怖、逃避、自己嫌悪を描く大江健三郎の長篇である。アフリカへの夢と現実の責任が衝突するなかで、主人公が自分の運命を引き受けるまでの魂の遍歴を追う。
逃避を望む青年が、子の誕生によって自分自身の倫理と向き合わされる。
258ページ
父性障害逃避責任
『楡家の人びと』は、東京青山の楡脳病院とその一族三代を描く北杜夫の長篇である。明治から昭和へ向かう時代の変化を背景に、楽天的で誇大な院長・楡基一郎を中心とする家族の滑稽さ、孤独、崩壊の気配を重層的に描く。
大病院を築いた一族のにぎやかな年代記が、近代日本の光と翳りを映し出す。
581ページ
家族史病院近代日本年代記
冥府の河レーテーのイメージを核に、過去の事件と記憶、愛と死の影が交錯する長篇小説。叙情的な文体の奥で、人が忘れようとしても消えない罪や喪失の感覚を見つめる。
忘却は救いであると同時に、過去から逃れられない人間の悲しみを映す。
368ページ
記憶喪失愛と死芸術家の内面