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受賞作: 杳子
登山で出会った男女の関係を通して、精神の揺らぎと身体感覚の不確かさを描く小説。現実と幻影の境目を曖昧にする文体が、古井由吉の初期文学を特徴づける。
杳子は、古井由吉の表現が受賞時の評価と結びついた作品である。
428ページ心理身体感覚幻想
古井 由吉
ふるい よしきち
Furui Yoshikichi
プロフィール
- 性別
- 男性
- 生誕
- 1937-11-19 (東京市(東京府、現・東京都))
- 死没
- 2020-02-18 (東京都内(自宅)) 82歳
- 国籍
- 日本
- 言語
- 日本語
- 居住地歴
- 東京都(生誕・死没) → 金沢市(勤務)
経歴
- 職業
- 小説家, ドイツ文学者, 大学教員
- 活動期間
- 1968年〜2020年
- 所属
- 金沢大学(助手・講師), 立教大学(助教授)
- 影響を受けた人物
- ロベルト・ムージル, ヘルマン・ブロッホ, フランツ・カフカ, アーダルベルト・シュティフター, ライナー・マリア・リルケ, テオドール・シュトルム, フランツ・グリルパルツァー, ヨーゼフ・ロート, ドイツ文学, 嘉村磯多, 葛西善蔵, 私小説, 夏目漱石, 永井荷風
学歴
| 学校 | 学部 | 学科 | 学位 | 期間 | 国 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東京大学 | 文学部 | 独文学科 | 学士 | 1956-1960 | 日本 |
| 東京大学大学院 人文科学研究科 | 人文科学研究科 | 独語独文学専攻 | 文学修士 | 1960-? | 日本 |
受賞歴
| 年 | 賞名 | 対象作品 | 部門 | 主催 | 結果 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1971 | 芥川龍之介賞 | 杳子 | — | — | 受賞 |
| 1980 | 日本文学大賞 | 栖 | — | — | 受賞 |
| 1983 | 谷崎潤一郎賞 | 槿(あさがお) | — | — | 受賞 |
| 1987 | 川端康成文学賞 | 中山坂(短編) | — | — | 受賞 |
| 1990 | 読売文学賞 | 仮往生伝試文 | — | — | 受賞 |
| 1997 | 毎日芸術賞 | 白髪の唄 | — | — | 受賞 |
受賞・候補エディション
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第12回(1980年) 受賞受賞作: 栖
『栖』は、古井由吉が人の住まいと身体、記憶、男女の関係を重ねながら、日常の内部にひそむ不安と揺らぎを描く小説。生活の場であるはずの「栖」が、親密さと孤独、安堵と狂気が交差する場所として立ち上がる。
暮らしの場所は、安らぎだけでなく、身体と記憶がざわめく不穏な空間にもなる。
405ページ住まい身体記憶男女関係内向の世代
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第19回(1983年) 受賞受賞作: 槿
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第14回(1987年) 受賞受賞作: 中山坂
『中山坂』は、古井由吉による小説です。受賞時に注目された主題や語りの調子を手がかりに、人物、場所、出来事が重なり合う作品として読むことができます。
『中山坂』は、題名が呼び込む情景と作者の関心を結びつけながら、受賞作としての輪郭を残す作品です。
人物時代記憶関係性
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第42回(1989年) 候補受賞作: 仮往生伝試文
『仮往生伝試文』は、古井 由吉による受賞作で、題名が示す人物・場所・出来事を手がかりに、人間の選択や時代の空気を描く作品である。物語性のある作品では登場人物の関係と転機を、評論・ノンフィクションでは対象への観察と論点の積み重ねを軸に読ませる。
『仮往生伝試文』は、受賞時代の問題意識と著者の視線が交差する一作である。
時代と個人記憶社会人間関係
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第41回(1989年) 受賞受賞作: 仮往生伝試文
『仮往生伝試文』は、古井由吉による文学作品。受賞時の評価対象となった作品で、題名が示す情景や関係性を軸に、人物の記憶、土地、時代の空気を読ませる。
受賞作として読まれてきた『仮往生伝試文』は、静かな題名の奥に人間と時代の手触りを残す。
受賞作文学作品記憶時代
作品
代表作
杳子
1970年 短編/小説神経を病んだ女性・杳子と登山で出会った男を、非現実的・幻想的なイメージを交えて描く作品。男女の心理の微妙な揺れを中心に据えている。
木曜日に
1968年 短編処女作として同人誌に発表された短篇。古井の作家活動の出発点となる作品群の一つ。
栖
1979年 連作長編都会に投げ出された男女の生活を描く連作長編。生と死、過去と現在の交錯を通じて都市生活の孤独や情感を掘り下げる。
槿(あさがお)
1983年 長編偶然出会った男女の間に生まれる濃密な性と心理を描いた長編。独自の文体で性愛と内面を掘り下げる。
仮往生伝試文
1989年 長編宗教説話を引きつつ生死に対する認識をたどる長編。老いや臨死意識に関する深い思索が展開される。
白髪の唄
1996年 長編老いの中で正気と狂気、生と死、現在と過去のあわいを往還する作風に達した長編。毎日芸術賞受賞作。
楽天記
1992年 長編椎間板ヘルニアの入院体験などを契機に、老いや身体性、精神のあわいを描いた作品。
辻
2006年 連作短編集晩年の作。断片的な場面や記憶を通じて、古井の特徴的な断片的語りと内面描写が展開される。
全著作
- 円陣を組む女たち(短編集)
- 杳子・妻隠
- 行隠れ
- 櫛の火
- 聖
- 栖
- 親
- 槿
- 仮往生伝試文
- 楽天記
- 白髪の唄
- 辻
作家による翻訳
- ブロッホ『誘惑者』翻訳(1967)
- ムージル作品の翻訳(『愛の完成』など)
- リルケ訳詩の収録(『ドゥイノの悲歌』などの訳詩を収録)
作風・主題
- 文体
- 独自の脱臼的文体(文法・人称・時間軸の操作)内省的で明晰な描写幻想的かつ清澄なイメージの使用
- 頻出モチーフ
- 男女の愛生と死記憶・追想老いと精神の深部古典・説話・短歌・連歌
健康
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椎間板ヘルニア1991(約2か月入院)入院体験が転機となり、以降の作品に老いや身体性に関するテーマが顕在化した。
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視力障害・眼の故障晩年朗読や講演に影響を与え、作品中にも視覚や耳など感覚への言及が増えた。
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肝細胞癌2020年(死去)2020年に肝細胞癌のため自宅で死去(死因)。
評価・遺産
内向の世代を代表する作家として、精神の深部に分け入る描写と既成の日本語文脈を破る独自の文体で高く評価された。主要な文学賞を多数受賞し、晩年は文学賞を辞退する姿勢を示した。
大衆文化への影響
- 日本中央競馬会機関誌「優駿」に競馬エッセイを連載
- デイリースポーツ紙上でGI競走予想を寄稿
豆知識
- 1968年刊行の短篇「木曜日に」で処女作デビュー。
- 1971年に『杳子』で第64回芥川龍之介賞受賞。
- 1997年以降、文学賞の受賞を辞退した。
- 熱心な競馬ファンとして知られ、『優駿』などにエッセイを寄稿。
- 2005年に芥川賞選考委員を執筆専念を理由に辞任。
- 晩年は視力障害が相次ぎ、2020年に肝細胞癌で死去。