芸術選奨文部科学大臣賞 げいじゅつせんしょう もんぶかがくだいじんしょう
第14回(1964年)
受賞者
10名『狂い凧』は、梅崎春生が戦争の記憶と戦後の日常を緻密につなぎ合わせた晩年の長編である。過去の体験が現在の意識を揺さぶる過程を、虚無感と皮肉を帯びた文体で描き、人間の弱さと執着を静かに浮かび上がらせる。
戦争の記憶と日常の時間が絡み合い、人生の不条理を見つめる梅崎春生の晩年作。
『謡曲集』は、横道萬里雄と表章が校注を担った能楽詞章の集成である。観世流の古い謡本を基礎に、作品を読み、謡い、構造として理解するための本文整理と注釈を施し、能を文学としても舞台芸術としても開く一冊となっている。
能の詞章を読むための基礎を整えた、日本古典文学大系の代表的な校注書。
『謡曲集』は、表章と横道萬里雄による能楽詞章の校注書である。古い観世流謡本を踏まえ、本文を読みやすく整理しながら、小段や節の構造を示すことで、能の言葉が舞台の進行とどのように結びつくかを明らかにしている。
本文研究と能楽研究を結び、謡曲を読む手触りと舞台の構造を同時に伝える校注書。
『しとやかな獣、母』は、新藤兼人が原作、脚本、監督などで関わった映画作品群として評価された受賞対象である。『しとやかな獣』では団地の一室を欲望と打算が交差する小宇宙に変え、『母』では家族と記憶を見つめる視線を通じて、人間の生の重さを描き出している。
欲望、家族、記憶を鋭く見つめる、新藤兼人の映画的表現。
『調理場、女中たち、城』は、文学座が海外戯曲を中心に上演した舞台成果として評価された受賞対象である。閉鎖的な場所で働く人々、主人と従属者の関係、不条理な権力の感覚を、俳優の身体と劇場空間を通じて立ち上げた。
現代劇の緊張を日本の舞台に移し、劇団のアンサンブルで支えた文学座の上演。
『十賊』は、二代目花柳錦之輔が日本舞踊の古典性と舞台表現の洗練を示した演目である。花柳流の確かな型を基礎に、人物の気配や場面の転換を細やかな所作で描き、古典舞踊の物語性を舞台に立ち上げている。
型の確かさと所作の細密さで物語を浮かび上がらせる日本舞踊の舞台。
『雨の日』は、海老原喜之助が独自の構成力と詩情を示した絵画作品である。反アカデミズムの素朴な感覚を保ちながら、雨の気配を画面全体のリズムとして組み立て、日常の風景に沈潜した叙情を与えている。
雨の気配を構成と色調でとらえ、日常風景に詩情を宿した海老原喜之助の絵画。
『出雲大社庁の舎』は、菊竹清訓が出雲大社の神域に設計した近代建築である。プレストレスト、プレキャスト・コンクリートを用いて大きな無柱空間を生み、古代的な屋根や棟持柱の記憶を現代技術で再解釈した。
神域の伝統を現代構法で読み替えた、菊竹清訓の代表的な近代建築。