読売文学賞 よみうりぶんがくしょう
第71回(2019年)
受賞者
6名島田雅彦が自らの若き日を「君」と呼び、作家としての出発、孤独、過失、文壇との摩擦を描く自伝的青春私小説。鮮烈なデビューの裏側にあった羞恥や愚行までをさらし、作家という存在が物語になっていく過程を語る。
異端と呼ばれた若き作家が、自らの愚行と羞恥を物語へ変える。
中高年のひきこもりと老いた親をめぐる問題を、ドキュメンタリー作家志望の女子大生の取材を通して描く二人芝居。社会問題を題材にしながら、認識や記憶の不確かさ、命が長く続くことの切実さを舞台上に浮かび上がらせる。
ハッピーエンドにするには、命が長すぎる。
老いによって目や記憶が弱まり、蔵書との付き合いも変わっていくなかで、読書人が本との最終章を軽やかに綴る随筆集。鶴見俊輔、幸田文、須賀敦子らへの言及を交え、長く読んできた者だからこそ見える読書のよろこびを描く。
もうじき読めなくなるかもしれないからこそ、読書はなお新鮮な喜びになる。
澁澤龍彦の生涯と作品世界を、未公開資料や関係者の証言を交えて追う評伝。サド裁判、現代思潮社、雑誌『血と薔薇』、矢川澄子や龍子との関係まで、知的な仮面の奥にある生活と創作の航路を描く。
澁澤龍彦という航海者の知と生活を、資料と証言でたどる本格評伝。
川野里子の第六歌集。かりん叢書の一冊として刊行され、現代短歌の言葉で他者や世界との出会いを受け止める作品集である。日常の気配、身体感覚、社会へのまなざしを重ねながら、読者を静かに作品世界へ迎え入れる。
他者を迎え入れるという題の奥で、現代を生きる感覚が短歌の器に結晶する。
ミシェル・レリスを、文学・美術・自伝の交差点から読み直す研究書。マッソン、ジャコメッティ、ピカソ、ベイコン、デュシャンらとの関係をたどり、肖像という主題がレリスのテクストとイメージの往還のなかでどのように変奏されるかを論じる。
レリスの肖像をめぐる旅は、二十世紀フランスの文学と美術を映し合う鏡になる。