日本の文学賞

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毎日出版文化賞 まいにちしゅっぱんぶんかしょう

第9回(1955年)

文学・芸術部門人文・社会部門自然科学部門企画部門特別賞

受賞者

10名
土門拳 どもん けん 受賞

『室生寺』は、土門拳が奈良の室生寺を対象に、寺の自然、堂塔、仏像を撮影した写真集である。1939年に初めて室生寺を訪れて以来、土門が長く取り組んだ古寺撮影の中核的な主題を示す作品として、戦後日本写真と仏教美術の接点を形づくっている。

土門拳が生涯にわたり見つめた室生寺の自然と仏像を凝縮した写真作品である。

147ページ
写真集室生寺古寺巡礼仏教美術土門拳
中野重治 なかの しげはる 受賞

『むらぎも』は、中野重治の自伝的長篇小説で、『梨の花』『歌のわかれ』に続く作品として、旧制高校から東京帝大へ進む片口安吉の精神の歩みを描く。新人会での活動、合同印刷ストライキ、プロレタリア運動の予感を背景に、時代に流されながらも自分の思想と生を探る青年の内面を追った作品である。

学生運動と労働運動の予感のなかで、青年の心の襞が時代の光と影を受け止める。

446ページ
自伝的長篇学生運動プロレタリア運動青年の精神形成昭和文学
金井喜久子 かない きくこ 受賞

『琉球の民謡』は、作曲家・金井喜久子が琉球諸島の民謡を調査し、起源、変遷、音楽的特質、歌詞解説をまとめた著作。1954年に音楽之友社から刊行され、琉球・沖縄の歌を日本本土の読者に体系的に紹介した仕事として毎日出版文化賞を受賞した。

琉球の歌の由来と響きを、採譜と解説によって立体的に伝える民謡研究。

82ページ
琉球民謡沖縄音楽民俗音楽歌詞解説採譜音楽研究
青野季吉 あおの ききち 受賞
現代文学論大系

青野季吉らが編集に関わった、近代日本文学を対象とする文芸評論の複数巻論集。作家論、作品論、文学史、詩歌・演劇論などを巻ごとに配し、近代から戦後にかけての文学批評の流れを体系的にたどる。

近代日本文学をめぐる批評の流れを、複数巻の論集としてたどる。

文芸評論近代日本文学作家論文学史
服部之総 はっとり のそう 受賞

『明治の政治家たち』は、原敬へ連なる明治憲政の政治家群を、人物の側から描いた服部之総の歴史評論である。陸奥宗光、星亨、伊藤博文、板垣退助、大隈重信、山県有朋、桂太郎、西園寺公望、原敬らを追い、明治から大正・昭和へ引き継がれる日本政治の性格を浮かび上がらせる。

政治制度だけでなく人物の出生、性格、手腕から、明治政治史の流れを読み解く。

194ページ
明治政治史原敬政党政治近代日本人物評伝
宮沢俊義 みやざわ としよし 受賞

『わたくしたちの憲法』は、憲法学者の宮沢俊義と教育・児童文学の国分一太郎が、堀文子の絵とともに日本国憲法を子どもとおとなへ語りかける入門書である。憲法全文をやさしく読み解き、物語、詩、手紙のような形を通して、戦後日本の民主主義と権利の考え方を生活の言葉で伝える。

日本国憲法のこころを、子どもにもおとなにも届く生活の言葉で読み直す。

286ページ
日本国憲法子どもとおとな戦後民主主義憲法教育やさしい入門書
近藤康男 こんどう やすお 受賞
日本の農業

『日本の農業』は、農業経済学者の近藤康男が編んだ1955年刊の著作。戦後日本の農業を、制度、経営、農村社会、統計的な把握を通して考察し、農地改革後の日本農業が抱える課題を社会科学の視点から整理した一冊である。

農地改革後の日本農業を、農民の現場と社会科学の方法から捉えた戦後農業論。

341ページ
日本農業農業経済農地改革後農村社会農業統計戦後日本
岩波書店 いわなみ しょてん 受賞

『化学の学校』は、ヴィルヘルム・オストワルドによる一般読者向けの化学入門書を、都築洋次郎が訳した岩波文庫版である。対話的で平明な語り口を通じて、物質の性質や化学変化を暗記ではなく観察と思考の過程として学ばせ、自然科学の精神へ読者を導く。

化学を公式の暗記ではなく、自然を観察し考えるための学校として開く古典的入門書。

299ページ
化学入門自然科学教育観察と思考岩波文庫科学古典
成瀬政男 なるせ まさお 受賞
歯車の話

歯車研究で知られる成瀬政男が、歯車の仕組み、形状、設計、製作、産業上の役割を一般読者にも届く語り口で解説した自然科学・工学の入門的著作。専門技術を社会やものづくりの文脈に結びつけて伝える。

歯車という身近な機械要素から、技術の成り立ちとものづくりの考え方を説く。

287ページ
歯車機械工学ものづくり科学解説
伊谷純一郎 いたに じゅんいちろう 受賞

『高崎山のサル』は、伊谷純一郎が大分県高崎山のニホンザルを長期観察し、群れの社会構造を明らかにした記録である。ボスザルを頂点とする序列、個体間の関係、餌付けされた野生群の行動を丹念に追い、日本の霊長類研究の出発点の一つとなった。

野帳と観察から、ニホンザルの群れに社会があることを示した記念碑的なフィールドワーク。

375ページ
霊長類研究ニホンザルフィールドワーク群れの社会構造高崎山