三島由紀夫賞 みしまゆきおしょう
第18回(2005年)
小説評論詩歌戯曲
受賞者
6名癒しがたい傷を抱えた女が長崎を訪れ、一人の青年と出会う。原爆の記憶を負う土地をさまよう二人の関係を通じて、歴史の記憶と個人の記憶、死へ向かう衝動とそれを阻もうとする力が交差する。
六〇〇〇度の雲に覆われた土地で、女は虚無の向こう側に世界を探す。
173ページ
長崎記憶喪失魂の恋愛
死に至る病から生還した男は、生への憎悪と悪意に飲み込まれ、ついに親友を殺す。人はなぜ人を殺してはいけないのか、罪を犯した人間に再生はありうるのかを、加害者の手記という形で突きつける問題作。
親友を殺した男の手記が、生と悪の境界を問い詰める。
170ページ
悪意殺人罪と再生内面独白
「クレーターのほとりで」は、青木淳悟の作品集『四十日と四十夜のメルヘン』に収録された小説。古代的な共同体や地層、未来の調査が重なり、起源をたどろうとしても決定的な答えに届かない、奇妙で考古学的な物語が展開する。
地層のほとりで、過去は手がかりを残しながら決して全貌を明かさない。
216ページ
起源地層共同体実験的文体
女優志望の澄伽が実家に戻ることで、妹・清深、兄夫婦、過去の事件が再びむき出しになる。自意識、嫉妬、家族への憎しみがブラックユーモアを帯びてぶつかり合い、愛されたい人間たちの滑稽さと痛ましさがあらわになる。
ありえない自意識が、壊れた家族の扇風機をまた回し始める。
183ページ
家族自意識ブラックユーモア地方と演劇
ある日、隣接する町との戦争が始まったと知らされる。銃声も流血も見えないまま、町の広報紙には戦死者数だけが増えていき、主人公は町役場から敵地偵察を命じられる。日常の制度の中に戦争が入り込む不気味さを描く。
戦争は見えないまま、役場の手続きとして日常へ忍び込む。
200ページ
見えない戦争行政日常の不条理社会寓話