芸術選奨文部科学大臣賞 げいじゅつせんしょう もんぶかがくだいじんしょう
第42回(1992年)
受賞者
17名坂上弘の小説集。日常の中にある記憶、老い、家族や場所への感情を、静かな筆致で掘り下げる。表題が示す港のような場が、人生の一時的な安らぎと揺れを象徴する。
人生の航路にふと現れる、穏やかな停泊地の気配を描く。
鳥の声と四季の移ろいを軸に、日常の背後に広がる幻視的な時空を探る詩集。言葉の響きと観念の緊張が、自然の気配を宇宙的な感覚へ押し広げる。
鳥の声が、季節の奥にある幻の時空へ読者を導く。
沖縄・奄美を中心とする南島の歌謡や神話をたどり、日本文学の発生を民俗学の視点から考察する大部の評論です。古謡、祭祀、言霊の世界を読み解き、列島文学の源流を南方の文化圏へ開いていきます。
南島文学発生論は、谷川健一の表現世界を凝縮した受賞作です。
元禄期の歌舞伎を、役者・興行・台本・観客文化の広がりから精密に論じた演劇研究書です。近世芸能の成立過程を資料に即して読み、歌舞伎史の転換点を立体的に示します。
元禄歌舞伎攷は、鳥越文蔵の表現世界を凝縮した受賞作です。
東京で働く女性が山形への旅の途中で少女時代の記憶と向き合い、自分の生活と感情を見つめ直していくアニメーション作品です。日常の細部と地方の風景を重ね、成長後に訪れる内面の揺れを丁寧に描きます。
おもひでぽろぽろは、高畑勲の表現世界を凝縮した受賞作です。
加藤剛による舞台上演の連作で、愛をめぐる複数の人物像を俳優の身体と言葉で掘り下げた演劇作品です。文学的な題材を舞台表現へ移し、静かな情感と緊張を重ねます。
〈わが愛〉三部作は、加藤剛の表現世界を凝縮した受賞作です。
長唄三味線の家に受け継がれる技芸を、親子の共演として示した演奏会です。古典芸能の型を守りながら、舞台上の呼吸と継承の厚みを聴かせます。
杵屋勘五郎 廣吉親子会は、杵屋勘五郎の表現世界を凝縮した受賞作です。
志田房子が琉球舞踊の古典と創作の蓄積を舞台に結晶させた公演です。所作の端正さ、音楽との呼応、沖縄の身体文化を一体として見せる作品群が中心になります。
琉球舞踊の会は、志田房子の表現世界を凝縮した受賞作です。
野見山暁治の絵画世界を展覧会として構成した企画です。戦後美術の経験、記憶の層、色彩と形の緊張を通じて、作家の長い制作の歩みを示します。
野見山曉治展は、野見山暁治の表現世界を凝縮した受賞作です。
八代目観世銕之丞の芸を中心とする能楽公演。節目の会として、古典芸能の型と演者の成熟を舞台上で示した。
能の型に積み重ねられた時間が、記念公演の舞台で際立つ。
竹本織大夫による文楽素浄瑠璃の会。人形を伴わない語りと三味線の緊密な表現によって、義太夫節の言葉と音楽の力を前面に出した舞台である。
語りと三味線だけで、文楽の物語世界を立ち上げる。
半導体産業の形成を、技術者や関係者の証言を通して描く大型ドキュメンタリー。完結編ではマイクロプロセッサーをめぐる開発競争を中心に、日本の電子産業がたどった道を浮かび上がらせる。
小さな半導体をめぐる証言から、産業の時代精神が立ち上がる。
上海から来た女をめぐる謎と記憶を、久世光彦らしい映像的な感覚で描く物語。昭和の空気、異国趣味、迷宮的な人間関係が重なり、幻想味のある世界を形づくる。
上海の影をまとった女が、記憶の迷宮へ読者を誘う。
鳳蘭が出演したミュージカル舞台。強い母性とショービジネスの光と影を描く作品で、歌、演技、舞台上の存在感が受賞対象となった。
舞台の光の中で、母とショービジネスの執念が交差する。
滝廉太郎の生涯を題材にした映画作品。明治の音楽家の短い人生と創作への情熱を、青春映画として情感豊かに描く。
夭折した作曲家の旋律が、近代日本の青春を照らす。
観世銕之亟の能楽公演を中心とする受賞対象。古典の型を守りながら、舞台ごとの緊張と身体表現によって能の現在性を示した。
古典の型の中に、能の現在の息づかいが立ち上がる。