芸術選奨文部科学大臣賞 げいじゅつせんしょう もんぶかがくだいじんしょう
第41回(1991年)
受賞者
17名二十六編を収めた短編集。老い、帰郷、季節の感触、夢の痛みなどを細やかな文体で結び、静かな時間の中に人の生の陰影を浮かび上がらせる。
季節の移ろいと記憶の底に、人生の冷たい光が差し込む。
芭蕉の連句を読み解く評論。俳諧の共同性と即興性を、詩人・批評家としての鋭い言語感覚でたどり、古典を現代の読みに開く。
連句の息づかいを、風狂の余韻として読み直す。
今西祐行の童話・児童文学を集成した全集。小さな生きものや子どものまなざし、戦争と記憶をめぐる作品群を通じて、詩情と倫理感を備えた作家像を伝える。
童話のやわらかな語りの中に、命と記憶への深いまなざしが宿る。
坂本龍馬の姉・乙女を軸にした舞台作品。幕末の家族関係と歴史の転換点を、姉から弟へのまなざしとして立ち上げる。
歴史上の英雄を、姉の言葉と記憶から見つめ直す。
尾崎翠の作品世界を、感覚、幻想、女性の内面表現から読み解く評論。作家への敬意と小説家自身の感受性が重なり、近代文学の異色の魅力を浮かび上がらせる。
尾崎翠の不思議な感覚を、作家の目で読みひらく。
島尾敏雄の同名小説を映画化した小栗康平監督作。夫婦の断絶と再生を、張り詰めた演技と抑制された映像で描く。
夫婦の傷と沈黙が、逃げ場のない時間として迫る。
武田泰淳の作品をもとにした舞台で、人肉食の記憶と罪の意識をめぐる重い題材に向き合う。日下武史の演技は、極限状況の人間を抑制と迫力で示した。
極限の記憶を、声と身体で舞台上に引き寄せる。
長寿旅行番組として、海外の風景・生活・文化を日本の視聴者へ伝えた放送作品。兼高かおるの語りと取材姿勢が、未知の土地を身近に感じさせる役割を果たした。
まだ遠かった世界を、家庭の画面へ運んだ旅行番組。
菊地悌子の音楽活動における受賞対象作。題名の反復的な響きが示すように、リズムと身体感覚を前面に出した演奏成果として扱われる。
反復する響きが、演奏の身体性と緊張を引き出す。
上方舞の伝統を踏まえた地歌舞の演目。風に揺れる芦の葉に女心を重ねる古典的な情趣を、山村楽正の品格ある舞が支えた。
揺れる芦に心の揺れを託す、上方舞の繊細な舞台。
金属造形家・平松保城の作品をまとめて示した展覧会。素材の硬さと装身具的な精密さを併せ持ち、工芸と彫刻の境界を横断する仕事として位置づけられる。
金属の硬質な光が、身につける造形の詩情へ変わる。
具象洋画家・松樹路人の作品展。身近な人物や静物、風景を抒情と構成力で描き、戦後日本洋画の中で独自の清澄な画面を築いた。
白を基調とした画面に、生活と記憶の静かな気配が宿る。
雅楽の古典曲をめぐる演奏成果。宮廷音楽の型と響きを現代の舞台で精緻に示し、古典芸術の継承と演奏技術の高さを伝える。
古い楽の型が、端正な響きとして舞台に立ち上がる。
NHKドラマスペシャルとして制作されたテレビドラマ。未熟さを抱えた人間の揺れを、テレビ演出の細やかな呼吸で描き出した。
未熟さを抱えた人の姿を、画面の呼吸で見つめる。
ニコス・カザンザキス原作に連なるミュージカルの日本上演。藤田まことはゾルバの荒々しさと人間的な温かさを併せて演じ、舞台俳優としての幅を示した。
荒々しく、陽気で、孤独な男を舞台いっぱいに立ち上げる。
日下武史の舞台成果を複数作として捉える受賞対象。重い題材を扱う「ひかりごけ」を中心に、俳優の声、間、身体の制御が作品の緊張を支えた。
声と沈黙の強度が、舞台の倫理的な重さを支える。
菊地悌子の「Don-Don」での演奏を対象とする受賞。反復的な音型とリズムを、演奏者の集中力と身体の動きで立ち上げる。
音の反復が、演奏者の集中と身体を鮮やかに映す。